水道凍結防止ヒーターにかかる電気代について

寒冷地(冬場の最低気温が0℃を下回り水道管が凍結するような地域)の一般家庭では、水道管の凍結を防ぐため水道凍結防止ヒーターが使用されていますが、この水道凍結防止ヒーターにかかる電気代は①消費電力と②通電時間によって決まります。

① 水道凍結防止ヒーターの消費電力について

  水道凍結防止ヒーターの消費電力は以下の3つの要素によって決まります。

  • ● 水道凍結防止ヒーターの本数
    水道管が凍結するような場所に配管されている場合は、その全ての水道管に水道凍結防止ヒーターが必ず使用されています。
    一般家庭の水道管は、水道の立ち上がり(1本目)、給湯器までの水(2本目)、台所の水(3本目)お湯(4本目)、洗面所の水(5本目)お湯(6本目)、風呂場の水(7本目)お湯(8本目)、トイレの水(9本目)、洗濯機の水(10本目)と10本程度はあるはずですので、水道凍結防止ヒーターの数も10本程度は使用されているということになります。
  • ● 水道凍結防止ヒーターの長さ
    基本的には水道管の長さの1倍~1.5倍となります(寒さの厳しい地域では水道管に巻き付けるため1.5倍となります)。
    一般家庭では1m~4m程度の長さが使われていますが、その平均値はおよそ2.5mとなります。
  • ● 水道凍結防止ヒーターの種類と1m当たりの消費電力
    水道凍結防止ヒーターには大きく分けて2種類があり(※1)その消費電力は種類によって異なりますが、1m当たり12W~20Wとなりますので平均値は1m当たり16Wとなります。

② 水道凍結防止ヒーターの通電時間について

  水道凍結防止ヒーターにはサーモスタットと呼ばれる温度スイッチが付属されており、このサーモスタットが温度を感知し必要な時期にはON、
  必要のない時期にはOFFになるような仕組みになっていますが、この温度設定はON温度が+6℃以下、OFF温度が+16℃以上となっています。
  この温度設定から水道凍結防止ヒーターの通電時間を算出すると、10月から5月の中旬まではONになっていることがわかります(※2)。

①消費電力②通電時間から一般家庭で使用されている水道凍結防止ヒーターにかかる電気代を算出すると、冬場ワンシーズン(10月~5月)でおよそ30,000円~90,000円程となります(※3)。

※1 【ニクロム線ヒーター】
   鉄管に使用されることが多く、構造がシンプルで安価なため一般的に多く出回っているヒーター。
   【自己温度制御型ヒーター】
   温度に応じて抵抗値(消費電力)が変化するヒーター。異常加熱を防ぐため主に樹脂管に使用されることが多い。
   特殊な特性を持っているためニクロム線ヒーターより高価。

※2 セーブ90技術資料(セーブ90+3 地域別節電試算表①-1 ~ ⑤-1)

※3 セーブ90技術資料(セーブ90+3 電力会社別節電試算表①~⑤)

サーモスタットの性能について

以上のような水道凍結防止ヒーターの仕組みを知ると、温度設定が高すぎると思われるかもしれませんが、水道凍結防止ヒーターに使われているサーモスタットの温度設定には2つの特性的な理由があります。

  • ① サーモスタットの温度公差
    大量生産する過程で全てを同じ温度設定で作るのは至難の業です。サーモスタットには±3℃の公差が生じてしまうため、例えばON温度を+3℃に設定したとすると、最高で+6℃,最低だと0℃というものが出来てしまいます。
    このON温度の最低が0℃になってしまうと水道管が凍結してしまう可能性があるため、こn温度公差を考慮するとON温度の設定は最低でも+5℃~+6℃程度となります。
  • ② サーモスタットの温度ディファレンシャル
    温度ディファレンシャルとはON温度とOFF温度の差のことを言いますが、サーモスタットにはこのON温度とOFF温度の差が10℃程度あります。
    前述①の通り、温度公差の関係上ON温度を+6℃に設定したとすると、OFF温度は必然的に+16℃ということになります。

では、そんな温度公差と温度ディファレンシャルというデメリットがあるサーモスタットではなく、もっと性能の良い温度スイッチを使えばいいじゃないかと思われるかも知れませんが、サーモスタットにはこれらのデメリットを上回る
● 構造がシンプルなため故障しにくく安価である
● 誤動作を起こしにくい
というメリットがあります。

万が一水道凍結防止ヒーターが故障すると水道が使えなくなってしまうため、水道凍結防止ヒーターに付属する温度スイッチに求められることは水道凍結防止ヒーターにかかる電気代を安く済ませることより故障のしにくさが最優先事項となります。
また、使用場所も屋外という過酷な環境となるためより高い安全性が求められる他、多いと十数個使用することになるため安価であることも重要な要素となります。
これらの理由から水道凍結防止ヒーターに付属する温度スイッチはサーモスタットが採用されています。

セーブ90+3の性能について

上記の通りサーモスタットでは温度設定が高く冬場の電気代が高くなってしまう要因となってしまいます。単純に考えれば温度設定を低くすれば良さそうに思いますがそれだけでは大して電気代も安くはならず、最悪の場合水道管が凍結してしまう可能性もあります。
当然のことながら水道管の凍結は水道管の温度が下がることで起きますが、この水道管の温度が変化する要因は外気温度の他に風速や日照、そのときの水道管温度が密接に関係しています。従って、水道管温度を適切にコントロールするにはこの四者(外気温度・風速・日照・水道管温度)の相関関係を無視することはできません。

セーブ90シリーズには、この四者(外気温度・風速・日照・水道管温度)を検知しながら、水道管温度を温めすぎず凍結しない最適な温度に保つ弊社独自の特許技術「FTC比例制御回路」が搭載されておりますが、セーブ90+3には新たに開発されたIHCケース(※4)とFWR構造(※5)が採用されました。この2つの新技術によって、セーブ90シリーズでは最高の最大95%超の驚異的な節電率を実現しています(※6)。

そのため、気温が低いと感じるときに通電ランプ(赤)が点灯していなかったり、気温がそんなに低くないと感じるときに点灯していたり、また同じ気温でも点灯しているときとしていないときがあったり等、そのタイミングは不規則ですが(サーモスタットとセーブ90の動作比較参照)、これは水道管温度を最適に保つための通電のタイミングとなるからです。

サーモスタットとセーブ90の動作比較

この弊社独自の特許技術「FTC比例制御回路」は、業界では唯一専門機関から認められた節電技術(※7)となりますが、この節電技術は公共交通機関(※8)や業務用の水道凍結防止ヒーター用節電コントローラー等にも幅広く採用されております。
また、FTC比例制御回路を搭載した製品は、1991年の販売開始から200万個を超える出荷台数となっており、この30年以上続く幅広い分野での実績がセーブ90シリーズ(FTC比例制御回路)の信頼の証しでもあります。

※4 IHCケース…熱伝導率の向上を目的とした、コンパクトなでありながら表面積を従来品の1.2倍に増やした新開発の外装ケース(特許出願中)。

※5 FWR構造…熱伝導率と耐久性の向上を目的とした、本体内部に特殊な樹脂を充填し空気の層を極限まで排除したモールド構造(特許出願中)。

※6 セーブ90技術資料 電力会社別節電試算表②【東北電力管轄】

※7 平成5年度「省エネバンガード21」省エネルギーセンター会長賞受賞

※8 その他省エネルギー機器(電気転轍機制御機